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[2007年10月]

テーマ/「水鏡に映す」_vol.6

 城石明喜子さんは舞踊家です。福岡県の南部、三輪町に育ちました。この地は卑弥呼で有名な邪馬台国の最有力候補地です。町の入り口に「邪馬台国へようこそ」という大きな石碑があります。

 それで明喜子さんは、若い頃から創作舞踊「卑弥呼」を作って、踊り続けてきました。私は出会った十年前に、その舞台を初めて見ましたが、古代の夢のような舞に深く感動しました。

 政治の世界に巻き込まれる前の可憐な娘、卑弥呼は、川のせせらぎに身を映し、髪を梳きます。その優美なしぐさは、そこが舞台であることを忘れさせ、まるで森の中の清らかな川の流れを感じさせました。客席は舞台より低いのですが、水に映る卑弥呼の姿を見ているような錯覚さえ覚えました。

 古代の宝の一つは鏡でした。古代の人にとって鏡は自分を映す不思議な神器であり、魂を映し出すと考えられたのでしょう。でも神器でなくても水には自分の姿が映ります。否、むしろ水の流れこそ、その人の心の有様を表しているように思えるのです。水が静かに流れれば姿はよく映りますし、ざわめけば姿はかき消されます。その掴みどころのない微妙さがまるで心だと思うのです。

人の心は 水鏡 静まれば己れを知り 波立てば己れは消える